statement

東洋では自然に神様が住まうとされています。それは地球上のすべての生命及び無機物や人工物、果ては宇宙に存在する物質に至るまで、現実に存在しうるすべての存在に神が宿るとされています。もちろん顔料も例外ではありません。この大前提が東洋の精神に深く刻まれていることが重要です。故に日本において顔料は単なる色としては捉えておりません。顔料それぞれが持っている素材の特性を見極め、それぞれの質感が調和を保つように配置されます。したがって自然人工問わず世界の一部でもある顔料を使用することは世界の再構成とも言え、それは一つの祈りの形とも言えます。

 

私の作品は物質の存在性を問うことを作品のコンセプトにしています。すべての物質は年月の長短はあれど、生まれた瞬間から死または崩壊への旅路をたどります。この死や崩壊を前提にした道中で幾度となく光り輝くからこそ、その崇高さに我々は心動かされ、また生を真っ当しようとします。

 

しかし、近年のデジタル技術の急成長により、多くのものがデジタル化されSF映画さながらの世界になりつつあり、その世界では物質や生命は永遠性を手に入れることになるでしょう。しかし映画「ブレードランナー2049」のワンシーンにもあるようにほぼすべてのものがデジタルに置き換わった世界ではリアルに存在するアナログ製品が高値で取引されています。これはいずれ朽ちてゆくアナログ時代の産物たる物質にこそ、真の価値があると映画の世界の住人達は理解しているように思えます。

このような未来は決して遠いことではなく、来るべきその時にアナログの極地である手わざによるアートはその尊さ故に益々その価値を高めると考えます。その時に最もプリミティブとも言える顔料から用いることは色や素材感をコントロールし、オリジナリティを出せるだけでなくかつて人類が表現することを覚えた時代に立ち返る行為であります。そしてそれは描く行為にすら意味を求める現代のアートにおいて非常にクリティカルであるといえます。

故に私は色の象徴たる顔料から用いることをこれからも行っていきたいと考えます。