Aesthetics of destruction

人は物質が自然や時間によって改変される経年変化にその物質が持つ本来の美とは別の美しさを見ます。それは滅びによってすべてが終焉するのではなく、わずかな生や美といったものが滅びの過程の中から新たに形成されているからではないでしょうか。このような滅びの美を概念化しマテリアルの持つ物質性を用いて表現としての再構築を試みています。

絵画の多くは経年変化により剥落やヒビ、シミなどが存在しています。

私は模写を経験してきたので、模写の行程上、剥落が無い状態の作品の姿を目にすることがあります。そうした中で 剥落を取り去ると作品の魅力が損なわれてしまう事があります。また、剥落した表情に注視するとそれはまるで、描かれているイメージが新たなイメージに上書きされていく様にさえ感じます。そういった意味では剥落はある種、絵画が歴史の審判を通過して来た証であり、時間の経過が生み出した、マチエールとして捉えることが出来るのではないでしょうか。本シリーズではこの剥落に着目し、剥落の進行を滅びゆく世界に置き換え、剥落によって新たな世界へと組み換えられていく様を表現しました。