古来、人は岩や滝、火山のある場所を神奈備と呼び、聖域として祀ってきた。その中心にしばしば置かれるのが鏡——光を受けたときにのみ像を顕現させる装置である。本シリーズはこの構造を、現代の材料で再演する試みである。御神体をサーモカメラで撮影し、熱画像を大小のドットに変換して描く。温度の高い箇所は大きく、低い箇所は小さく。熱とは、あらゆる物体が絶えず発している不可視の放射であり、存在の物理的な兆しである。画面には再帰性反射材と蓄光顔料を用いた。再帰性反射材は、届いた光を来た方向へだけ送り返す。ゆえに像は、光源と眼が一直線に揃った者の前にしか現れない。最も深い体験は屋外で訪れる。太陽と作品と自分の身体——三者の位置が揃ったその一瞬だけ、何もないはずの画面に色が浮かび上がる。神社の鏡が太陽の光を受けて神を映すとされたように。そして暗闇では、蓄光顔料が昼のあいだに蓄えた光を静かに放ち、もうひとつの像が立ち上がる。見えるかどうかを決めるのは作品ではない。太陽と、あなたの身体の位置である。